私の仕事は「ご機嫌プレゼンター」です
「さあ、行くぞ!」掃除で社会を輝かせるシニアの皆さん(前列左端が響城さん)
同窓会広報担当者(以下「WM」);
講演活動で全国を飛び回っておられるとのこと、このたびはお忙しいところインタビューをお引き受けくださり、本当にありがとうございます!
テレビでも響城さんをお見かけしたことがありますが、神戸高校ご出身でいらしたとは!
響城さんのお仕事について、教えていただけますか。
響城さん;
私の仕事は「掃除を教える」ことですが、タダの掃除ではありません。
「掃除のストレスを解決して人をご機嫌にし、社会を輝かせること」、つまり「ご機嫌プレゼンター」だと思っています。
たとえば、掃除や片づけを学んだシニアは、その技能を活かして仕事に就きますよね。
「身体を動かすと気持ちいい」「人から直接感謝されることなんて、今までなかった」「毎日朝日を見ながら出勤。ちょっと幸せ」「大きな声で挨拶したら、悩みも吹っ飛ぶ」。
不機嫌でコワい顔だったおじさんも、可愛い笑顔を見せてくださいます。
シニアだけではありません。仕事と家事・育児との両立に悩む女性社員には「家事、やらなくても大丈夫だから」と励まします。
家事は、もともと「終わりなし、評価なし、報酬なし」という三重苦のような仕事。「できていないこと」を気にしていたら、落ち込むだけです。「忙しい中でやったことを数えて自分に拍手しましょうよ」と言うと、「え?」と戸惑った後、パッと顔が明るくなります。仕事も人生も、新しいことにチャレンジする意欲がわいてくるようです。
WM;
なるほど。掃除をきっかけに、女性の皆さんがポジティブに生きていけるようにサポートをされていらっしゃるのですね。
響城さん;
そうです。最近、私が新しく挑戦しているのは「家造り」です。
ハウスクリーニングを20年やっていて気づいたのが、掃除しづらい家が多いこと。
窓がはめ込まれていて外側が拭けないとか、トイレが狭くて便器の向こう側まで手が届かないとか、段差が多くて掃除機掛けが大変とか、洗面ボウルが2つあるので掃除の手間も2倍とか…。「広く大きく」「豪華に」をステータスとしてきたけれど、掃除ができないことに多くの女性が悩み、心を痛めています。脚立から落っこちて身体を傷める場合もあって、笑えない話です。
女性だけの設計デザイン事務所と掃除のプロがコラボして造る家は「掃除しやすさ」に徹底的にこだわった家。忙しくてもすぐにキレイになるように広くはなく、天井も手が届く高さで、ゴチャゴチャ飾りは付けず、収納棚は扉で隠す…。掃除の心身の負担がなくなれば、日本の生産性は劇的に上がりますよ。シニアの方がリフォームを考える時も、絶対に外せないポイントだと思います。
「誰も気がついていないからこそおもしろいよね」「絶対に日本を変えようね」とワクワク進行中です。
「この人、カッコいい!」が仕事を始めるきっかけに
WM;
女性だけの設計デザイン事務所と掃除のプロがコラボして造る家!聞くだけで興味がわきますね。掃除は毎日のことですから。
響城さんがお掃除のお仕事を始められたきっかけはなんだったのでしょうか。
響城さん;
掃除とともに生き、常に「掃除、掃除」と叫んでいるからでしようか。 「よほど掃除が好きだったんですね」とよく言われますが、家族が聞いたら大笑いです。
「この人、カッコいい !!!」 これが、私が仕事を始めたきっかけなんです。
大好きな彼と結婚したはずなのに「扶養家族」になった途端に何とも言えない息苦しさを感じて悶々としていた30歳の私が出会った女性社長は、元CA。
ドイツで学び、日本では珍しかったハウスクリーニングサービスを起業。自分で決める。自分で稼ぐ。ビシッとスーツを決めてハンパない目力と大きな声で「そこに壁があったら、乗り越えるのではなく、ブチ破って進むの」と言い切る人。
「この人と一緒にいたら、こんなふうにカッコよくなれるんだわ」、今を逃したらダメだと、即、入門志願。
何をするのか、私にできるのか。給料はいくらか。休みはあるのか。迷うヒマもないほどの強烈な思いでした。
当然、翌日から「あなたは幹部候補生。現場一切を任せるわ」のひとことで人の家の掃除です。換気扇に頭を突っ込んで髪はベタベタ、汗びっしょりで化粧は流れる、カビ取り剤でむせて声が出なくなる、「これ、本当に人が使っていたのか?」と顔をそむけたくなるような便器と格闘…。
でも、楽しかったんです。投げ出さなければ、できる。そして、社長がちゃんとほめてくれる。まるで「忠犬ハチ公」みたいですね (笑)
それでも20年も続けたのですから、「何でもできる」という自信がつきました。
先のことを考え過ぎたら、走り出せない。まず走り出してみる。トップスピードになったら少し考える。人生には、そんな時期も必要なのかもしれません。
女性がやらなければ、男性が家事をやり始めますよ(笑)
「人生が変わった!」とこの笑顔(前列中央が響城さん)
WM;
響城さんが書かれている連載記事や書籍を読ませていただきました。働く女性として、私自身も「まさに!!」 「なるほど、そう考えたらいいのか!」と思う部分ばかりです。心の中で悶々としていたことが、響城さんの一言でなんだかホッとし、いい意味で肩の力を抜ける、そんな気がします。世代を問わず、女性に読んでいただきたい本ですね。
一方で、男性が聞いたら「おいおい、うちの妻に余計なことを言わないでくれ!」と焦ってしまう内容なのではと思ったり・・。(笑)
ご自身が女性活躍を推進されている中で、世間からの逆風などはありませんでしたか。
響城さん;
シニアの掃除講習は、さまざまな人間模様の縮図で、面白いですよ。
掃除の宿題を出すんです。「入浴中に床のタイル目地をこする」とか「ガスレンジを調理中にさっと拭く」とか。すると…
「勝手にキッチンに入るとツマに怒られるのでできませんでした」という男性。
「宿題は全部夫に教えてやってもらっていま〜す」という女性。
意外なことに「掃除って、科学的で奥が深いですね」と嬉々として初めて取り組まれる男性も多いです。ただし、奥様に「たまには掃除でもしてよ」と指示されると、急速にやる気がしぼむのだそうです。
共働き女性の研修で多い質問は「家事はどこまでやればいいのでしょうか」。
仕事が忙しくて、なかなか自分の母親のように丁寧な家事はできない。家族に申し訳なくて睡眠時間を削ってがんばっているけれど、身体がつらい・・・。そんな時には「家事は、ニコニコ笑ってできるところまで。眉間にシワが寄ったら、そこで終了だよ」と答えます。だって、もともと「終わりのない」仕事。どこで止めても同じですから。「そんなわけにはいかないじゃないですか」と必ず反論がきますが、それが思考停止状態。現状を疑わなければ改革は始まりません。最近、同世代の男性と話していたら「ウチの妻って、家事をきちんとやり過ぎてコワいんだ」と。あら、勝手なことを…。でも、私も見てきました。部屋を磨き立てたところに元気で帰って来た泥んこの子どもを「何やってんのっ」と力いっぱい怒鳴りつけているお客様の姿。家事は確かに大切な仕事ですが、自分が不機嫌になって家族をビビらせてまでやるくらいなら、やらなくてもいいのでは?。誰もが忙しいからこそ、考えたいことです。
こんなクイズも出します。「男性が家事をやらないのはなぜでしょう?」
10秒間考えてみてくださいね。
WM;
男性が家事をやらない理由。う~ん、「母親が家事をしているのを見て育ったからそれが普通だと思っている」でしょうか。
響城さん;
答えは、これ。「女性が家事をやるから」。
女性がやらなければ、男性がやり始めます。それでもやらないとしたら、それはもともとムダな仕事だったのかもしれません。
ただし、家事をやらないと決めた女性は、男性が「仕方ないな」と感じるようなしかけはしてくださいね。わざわざケンカを売ることはありません。私の場合は「疲れ切って死んだフリ」と「仮病」。「あ、ごめんね〜」と飛び起きるフリはするけれど、やらない。
そして、やってくれたことに文句を言わない。窓ガラスのすみが汚かろうと、ハタキがけで大切な花瓶を割ろうと、いいじゃないですか。「おー、すごい」と盛大に拍手してホメまくりましょう。「だから男には任せられないのよ」なんて言ってしまったら、天の岩戸はもう2度と開きません。
詳しくは「20歳から始める女性の幸せキャリアの作り方」という本で詳しく紹介しましたので、ぜひ読んでみてくださいね。
当時のお手本は百恵ちゃんでした
元町の栄光教会でゴールイン
WM;
ところで、響城さんは高校時代、どのような神高生でいらっしゃいましたか。
響城さん;
阪神沿線の住民でしたので、山の上に仰ぎ見る伝統校は、憧れの存在でした。
当時の「大都会」である三宮を通り、寄り道して「御座候」を食べるのも夢で…。
中学のバスケ部の友人と、お正月返上。図書館に立てこもっていました。彼女は「あなたに勉強教えてもらった」と今でも言いますが、私は彼女の頑張りについて行くのに必死でしたね。
彼女は、半年で4ランクも上げてM校に行ったので。
念願の入学後、返って来たテストは、何と430番 !! 「さすがに賢い人が多いなぁ〜」「キレイな子が多いなぁ〜」とおのぼりさん気分でわくわくしていました
。
初めてお金を「稼いだ」のも高校の時でした。「こうべ市民美術展」の賞金壱萬円です。
使えなくて、ずっと神棚に飾ってありました。上手な友だちの横で大きなキャンバスに向かって。色使いも描き方もせっせとマネして…。れんがの煙突のある魚崎の古い酒蔵。震災でなくなってしまった懐かしい風景を何とか遺すことになりました。
高校時代は、「女子教育の時間」があって、社会で活躍している女性の先輩が体験を話し、視野を広げてくれます。お医者さんでいらしたり国の研究機関のリーダーでいらしたり。「それを聞いて感動して」と言いたいところですが、当時は恋愛にしか興味のない夢子ちゃん。「いや〜、あんなふうにはなりたくないよね」「ちゃんと結婚したいよね〜」とコソコソ言っている派でした。笑。
なにしろお手本は百恵ちゃん(※注 俳優の三浦友和さんとの結婚を機に引退した元女優・元歌手の山口百恵さん)。
進路指導で「24歳で結婚するので、大学なら2年しか社会に貢献できません。短大なら4年。だから、短大に行きます」と豪語したので、担任の先生が「結婚から逆算するなんて…」と怪訝な顔をされたのを覚えています。自分なりに一生懸命に考えた人生設計だったんですけどね…
神戸高校を出ているから、大丈夫でしょ!
震災で失った懐かしい酒蔵の風景
WM;
全国を飛び回って多くの人々に勇気と元気を与えられている響城さん。多くの方と出会ってこられたことでしょう。
お仕事の上で、「神戸高校OGでよかった!」と思われることはありますか。
響城さん;
「大学はともかく、神戸高校を出てるんだから大丈夫でしょ」これが、私が子ども0歳で再就職をした時、採用された理由でした。
1990年、東京で出会った女性社長は神戸大の先輩で姫西出身。
「家事に貨幣価値を付けて家事のステータスを上げる」と熱く語るミッションにしびれて、思わず「入れてください」と叫びました。
子育てしながら本気で仕事をする。私の辞書には決してなかったことができたのは、社長が「あなたはそれでいい。自信を持って行け」と、来る日も来る日も強烈に背中を押し続けてくれたからです。
仕事は絶対に辞めたらあかん。自分で稼ぐ覚悟が自分の誇りやから、人の言うことに惑わされるな、あなたの人生に責任持つのは自分だけ、何が起こるかはわからへんけど、それを「いいこと」にすることはできるよ...と言われていました。「しっかり働け」というマインドコントロールそのものですね。(笑)
でも、そのおかげで私は迷いも悩みもなく、とにかく進むことができたのです。
決して「何かを成し遂げた」わけではありませんが、「何があっても、生きているのはめちゃ楽しい」と感じ、だからこそ、人に少しでも力を与えることができる。そんな人生の軸が定まったのは、この社長との20年があったから。つまり、神戸高校のおかげです。神戸高校でなかったら採用されなかったかも…(笑)
今、女性が働くことは当たり前になりましたが、逆に不安が大きいのも現実ですね。
若い女性は「仕事と育児の両立なんて無理〜」「仕事は面白いけれど、いつ子どもを産めばいいの?」など悩みばかりがふくらんで、踏み出せないでいるようにも思います。
そんな彼女たちに、今度は私が思い切り背中を押してあげる番。
「絶対に大丈夫だから。その足で、一歩先の景色を見に行きましょう。人生はそれから決めても遅くはないよ」と。
私たちには自分でも知らないたくさんの可能性があります
若い人の力強い歩みを応援したい(前列中央が響城さん)
WM;
最後になりましたが、このHPをご覧のみなさまに、ひとこといただけますか。
響城さん;
仕事をしていて一番嬉しいのは、受講生の方が「人生が変わりました」と言ってくださること。
特にシニアの就職支援講座で、掃除の仕事などまったく考えていなかった人が掃除に興味を持ち、就職を決めた時ですね。
後日「仕事で身体を動かすと、体調が良くなりました」「こんなに楽しいとは思わなかったですよ」という方も多いです。
人生は100年時代と言われています。定年退職後にも、私たちには自分でも知らないたくさんの可能性があります。
それまで経験してきたことなんて、全世界のほんの一部でしかありません。
「私には向いていない」「恥ずかしい」「私にはできない」なんて言っていないで、どんどん新しいことをやってみませんか?
今ある仕事だけではなく、自分で作ったっていいんです。
私が50歳で会社を辞めたとき、先の予定表は真っ白でした。でも「こんなことができるんですが、要りませんか?」と発信していったら、「要る」という人がいました。10人ではダメでも、100人に発信したらひとりはいる。初めて口座にお金を振込んでくださったのを見た時、「え? これでいいの?」とパッと目の前が開けたことを覚えています。
100歳までの間に、いくつ人生の新しいページをめくることができるのか。楽しみですね〜♫
WM;
ありがとうございました!
今後のご活躍もお祈りしております!